はじめに:拡大を続ける海外EC市場の現状
世界的にEC市場は拡大を続けています。
特に中国と米国が市場を牽引しており、この2か国で世界のEC市場の7割を占めています。
EC市場の現状を以下の表に示します。
項目 |
内容 |
---|---|
2023年のEC市場規模 |
5兆8,211億ドル |
前年比成長率 |
10.0%増 |
市場を牽引する国 |
中国、米国 |
中国と米国のシェア |
世界のEC市場の7割 |
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる巣ごもり需要を契機に、EC市場は急成長しました。
パンデミック後の現在も成長は継続しており、2024年と2025年も8%台の成長が見込まれています。
また、越境ECも増加しており、中国発のプラットフォームであるシーインやテムなどが存在感を増しています。
世界中で人気が高まる一方で、課題も指摘されています。
この資料では、世界のEC市場規模と成長トレンド、主要国・地域のEC市場の動向、海外EC市場における最新トレンド、海外EC市場への参入戦略、そして海外EC市場の未来と展望について解説していきます。
【参考資料URL】
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2024/0901/cc7d192f8b17e6b8.html
世界のEC市場規模と成長トレンド
世界全体のEC市場は拡大を続けています。経済産業省の調査によると、2023年の世界のBtoC-EC市場規模は821兆円(旅行・チケット販売除く)と推計されています。これは、コロナ禍による巣ごもり消費やデジタル化の加速が要因の一つと考えられます。
また、eMarketerのデータに基づく経済産業省の試算では、2027年には市場規模はさらに拡大すると予測されています。
年 |
世界のBtoC-EC市場規模(兆USドル) |
EC化率(%) |
---|---|---|
2023年 |
5.8 |
20.8 |
2024年 |
6.3 |
22.4 |
2025年 |
6.9 |
24.0 |
2026年 |
7.5 |
25.5 |
2027年 |
8.1 |
26.9 |
国別に見ると、中国と米国が市場を牽引しています。2023年のEC市場規模は、中国が2.1兆ドル、米国が1.1兆ドルと、この2カ国で世界の約7割を占めています。
国 |
EC市場規模(兆USドル) |
シェア(%) |
---|---|---|
中国 |
2.1 |
36.2 |
米国 |
1.1 |
18.9 |
英国 |
0.3 |
5.2 |
日本 |
0.2 |
3.4 |
韓国 |
0.2 |
3.4 |
インド |
0.1 |
1.7 |
ドイツ |
0.1 |
1.7 |
フランス |
0.1 |
1.7 |
カナダ |
0.1 |
1.7 |
オーストラリア |
0.1 |
1.7 |
特に中国は、巨大な人口と急速なインターネット普及を背景に、世界最大のEC市場を形成しています。一方、米国ではAmazonをはじめとする大手ECプラットフォームに加え、D2Cブランドの台頭も市場の成長を後押ししています。
参考資料URL:
https://ebisumart.com/blog/world-ec/
(1) 世界全体のEC市場規模の推移と予測
世界全体のEC市場は近年、急速に拡大を続けています。経済産業省の調査報告書によると、2023年の世界のBtoC-EC市場規模(旅行・チケット販売除く)は821兆円に達しました。これはUSドルベースで5.8兆ドルに相当し、前年比で8.7%の成長となっています。
今後の予測では、2027年にはEC市場規模は1,098兆円(7.8兆ドル)に達すると見込まれており、引き続き堅調な成長が期待されています。この成長は、インターネット人口の増加、特にスマートフォン普及によるアクセス環境の改善が大きく寄与しています。また、コロナ禍による消費行動の変化もEC市場の拡大を後押ししており、デジタルシフトが加速しています。
年 |
世界のBtoC-EC市場規模(兆円) |
成長率(前年比) |
---|---|---|
2023年 |
821 |
8.7% |
2024年 |
895 |
9.0% |
2025年 |
975 |
8.9% |
2026年 |
1,059 |
8.6% |
2027年 |
1,098 |
3.7% |
特に、インドやアジア新興国などの人口増加地域では、今後のEC市場のさらなる拡大が予想されています。これらの地域では、インターネット普及率も上昇傾向にあり、EC市場の成長を牽引する重要な要素となるでしょう。
参考:https://ebisumart.com/blog/world-ec/
(2) 主要国のEC市場規模比較(中国、米国、欧州、日本など)
世界全体のEC市場規模は年々拡大を続けており、主要国間での規模比較は市場の現状把握に重要です。特に中国、米国、そして欧州、日本の市場規模を比較することで、各地域のEC市場の特徴や今後の動向をより深く理解することができます。
世界のEC市場を牽引しているのは中国と米国です。2023年のデータでは、中国が約400兆円、米国が約200兆円の市場規模となっており、この2カ国で世界のEC市場の半分以上を占めています。中国では巨大ECプラットフォームのアリババや京東などが市場を席巻しており、米国ではAmazonに加えてWalmartやTargetといった既存の小売大手もEC事業を強化しています。
また、EC市場規模では中国・米国に及ばないものの、欧州と日本も主要な市場です。欧州は国ごとにEC市場の特性が異なり、越境ECも活発に行われています。イギリス、ドイツ、フランスなどが主要な市場です。日本は世界4位の市場規模を誇りますが、EC化率は他国と比較して低い水準にとどまっています。
国/地域 |
EC市場規模(兆円) |
---|---|
中国 |
約400 |
米国 |
約200 |
欧州 |
約150 |
日本 |
約50 |
これらの主要国・地域のEC市場規模は、各国の経済状況や消費者の購買行動、ECインフラの整備状況など、様々な要因によって影響を受けています。
【参考資料URL】
https://ebisumart.com/blog/world-ec/
(3) 成長が著しい地域・分野
参考情報が取得できない、または資料に適切な情報がありませんでした。以下、オリジナルの知識を基に出力します。
世界的にEC市場は成長を続けていますが、中でも東南アジア地域は著しい成長を見せています。特にインドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどの国々では、インターネット普及率の向上とスマートフォンの普及、そして中間層の増加がEC市場の成長を後押ししています。
成長分野としては、以下の点が挙げられます。
*食料品: 新型コロナウイルス感染症の影響で、オンラインでの食料品購入が増加しました。この傾向は今後も続くと予想され、EC化が加速する分野として注目されています。
*ファッション: 若年層を中心にオンラインショッピングが浸透しており、今後も成長が見込まれる分野です。特に、D2Cブランドの展開は注目すべき点です。
*美容・ヘルスケア: 健康志向の高まりから、オンラインで美容・健康関連商品を購入する人が増加しています。パーソナライズされた商品提案や、オンラインカウンセリングなどのサービスが成長を促進しています。
*エンターテイメント: デジタルコンテンツの消費増加に伴い、オンラインゲームや動画配信サービスの市場が拡大しています。サブスクリプションモデルの普及も市場の成長を後押ししています。
地域 |
成長分野 |
---|---|
東南アジア |
食料品、ファッション、美容・ヘルスケア、エンターテイメント |
中国 |
越境EC、ライブコマース、ソーシャルコマース |
米国 |
D2Cブランド、サブスクリプションサービス |
欧州 |
サステナブルな商品、越境EC |
このように、世界中でEC市場は成長を続けており、地域や分野によって成長のドライバーが異なるため、それぞれの特性を理解することが重要です。
【参考資料URL】
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/4d6526437818384a.html
主要国・地域のEC市場の動向
世界各国でEC市場は成長を続けていますが、その状況は国によって大きく異なります。ここでは、主要な国・地域のEC市場の現状と課題について解説します。
国・地域 |
市場規模 |
特徴・課題 |
---|---|---|
中国 |
世界1位 |
巨大市場だが規制強化やプラットフォーム間の競争が激化 |
米国 |
世界2位 |
Amazonが強い影響力を持つ一方、D2Cブランドの台頭も注目される |
欧州 |
– |
各国で市場の特色が異なり、越境ECが活発化している |
東南アジア |
– |
モバイルファーストで、ソーシャルコマースが急速に拡大している |
日本 |
世界4位 |
越境ECの拡大が期待される一方、物流や決済などのインフラ整備が課題 |
中国は世界最大のEC市場ですが、近年は政府による規制強化やプラットフォーム間の競争激化といった変化が見られます。米国ではAmazonが圧倒的な存在感を示していますが、独自のブランドを展開するD2C企業の成長も著しいです。欧州は国ごとにEC市場の特性が異なるため、越境ECが盛んに行われています。東南アジアではモバイル利用が中心で、ソーシャルメディアと連動したソーシャルコマースが活況を呈しています。日本は世界4位の市場規模ながら、越境ECの拡大や物流・決済システムの整備など、更なる発展のための課題も抱えています。
【参考資料URL】
https://ebisumart.com/blog/world-ec/
(1) 中国:巨大市場の現状と規制、プラットフォームの競争
中国は世界最大のEC市場であり、その成長は目覚ましいものがあります。特に越境ECは中国経済の新たな牽引役として注目されており、世界各国への影響も無視できない存在となっています。
参考資料によると、中国の越境EC市場を牽引しているのは、いわゆる「出海四小龍」と呼ばれる4つの企業です。
企業名 |
説明 |
---|---|
Temu |
中国EC最大手ピンドゥオドゥオが手がける越境ECプラットフォーム。圧倒的な低価格を武器に急成長。 |
AliExpress |
アリババグループ傘下の越境ECプラットフォーム。越境EC界の老舗的存在。 |
SHEIN |
女性ファッションに特化した越境ECプラットフォーム。独自のサプライチェーンで低価格を実現。 |
TikTok Shop |
TikTokのEC部門。巨大なユーザー基盤を活かした販売戦略を展開。 |
これらの企業は、中国国内の製造業者に新たな販路を提供するだけでなく、世界中の消費者に低価格で商品を届けることで、グローバルな消費トレンドにも大きな影響を与えています。
参考資料:https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2024031101/index.html
(2) 米国:Amazonの影響力とD2Cブランドの台頭
アメリカEC市場を語る上で、Amazonの存在は欠かせません。eMarketerの調査によると、2021年にはアメリカEC市場におけるAmazonのシェアは41.4%と圧倒的な存在感を示しており、2位のWalmart(7.2%)を大きく引き離しています。この巨大プラットフォームは、多くの事業者にとって販路拡大の重要な場となっています。
企業 |
EC市場シェア(2021年) |
---|---|
Amazon |
41.4% |
Walmart |
7.2% |
eBay |
4.3% |
しかし、Amazonへの依存はリスクも伴います。競争の激化、手数料の負担、そしてAmazon自身のプライベートブランドとの競合など、事業者にとっての課題も少なくありません。
こうした状況下で、D2C(Direct to Consumer)ブランドが注目を集めています。D2Cとは、自社で企画・製造した商品を、中間業者を介さずに消費者に直接販売するビジネスモデルです。
D2Cブランドは、独自のブランドストーリーや世界観を構築し、顧客との直接的な関係性を築くことで、Amazonへの依存を軽減し、持続的な成長を目指しています。サステナビリティやブランド共創といったキーワードを掲げ、コアなファンを獲得しているD2Cブランドは、アメリカEC市場における新たな勢力となりつつあります。
(3) 欧州:各国市場の特徴と越境ECの活発化
ヨーロッパは、複数の国々が近接していることから、越境ECが活発な地域です。イギリスはEC市場規模が大きく、国民のオンラインショッピングの利用率が高いことが特徴です。AmazonやeBayなど、グローバルECサイトの利用も一般的です。フランスでは、食料品やファッション分野でのECが盛んです。ドイツでは、製造業が強いため、BtoBのECが発展しています。
国 |
特徴 |
---|---|
イギリス |
EC市場規模が大きく、Amazon、eBayなどグローバルECサイトの利用が一般的 |
フランス |
食料品やファッション分野のECが盛ん |
ドイツ |
BtoBのECが発達 |
(4) 東南アジア:モバイルファーストとソーシャルコマースの隆盛
東南アジアは、世界でも特にEC市場の成長が著しい地域です。インターネット普及率の向上とテクノロジーの進化を背景に、消費者の購買行動は大きく変化しています。中でも顕著なのが「モバイルファースト」と「ソーシャルコマース」の浸透です。
項目 |
説明 |
---|---|
モバイルファースト |
スマートフォンやタブレットが主要なオンラインショッピングツールとなっており、消費者は場所や時間を選ばずに購買できるスムーズで便利な体験を求めています。 |
ソーシャルコマース |
TikTok ShopなどのSNSアプリ上で購買が完結するソーシャルコマースが急速に普及しています。インフルエンサーによるライブ配信や口コミを通じて、消費者は商品情報に触れ、購買意欲を高めています。 |
一方で、各国で消費者の好みに違いが見られるのも特徴です。例えば、インドネシアでは利便性を重視する傾向があり、「当日配達」や「送料無料」といった配送サービスが人気を集めています。また、ベトナムでは品質志向が強く、環境に配慮した商品や企業のCSR活動への関心も高いです。
このように、東南アジアのEC市場は多様性と成長性を兼ね備えており、企業は各国の特性を理解した上で、最適な戦略を立てる必要があります。
(5) 日本:越境ECの現状と今後の課題
日本企業にとって、越境ECは大きな成長機会です。ジェトロの2016年度調査によると、既にECを活用している企業の約半数が海外販売にECを利用しており、その中でも中国は最も主要な市場となっています。
企業規模 |
現在の販売先(中国) |
今後の販売先(中国) |
---|---|---|
全体 |
49.6% |
43.8% |
大企業 |
63.5% |
48.0% |
中小企業 |
45.0% |
42.9% |
上記表のように、大企業は中小企業に比べて中国への販売実績、今後の販売意欲ともに高い水準です。特に衣料品・化粧品業界では、中国を販売先とする企業が9割近くに達しています。
しかし、越境ECには課題も存在します。言語や文化の違いへの対応、物流システムの構築、適切なマーケティング戦略の策定などが重要なポイントとなります。これらの課題を克服することで、日本企業は越境EC市場での成功を掴むことができるでしょう。
(参考)https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2017/12/268f143777299610.html
海外EC市場における最新トレンド
近年のEC市場は、消費者の購買行動の変化やテクノロジーの進化によって常に新しいトレンドが生まれています。ここでは、世界的に注目されている最新のトレンドをいくつかご紹介します。
トレンド |
説明 |
---|---|
モバイルコマースの普及とアプリの重要性 |
スマートフォンの普及により、いつでもどこでも買い物ができるモバイルコマースが主流になりつつあります。特に、購買体験を最適化できる専用アプリの開発は、顧客エンゲージメントを高める上で重要です。 |
ソーシャルコマース:SNSを活用した販売戦略 |
InstagramやFacebookなどのSNSを通じて商品を販売するソーシャルコマースは、購買プロセスを簡略化し、インフルエンサーマーケティングとの相乗効果も期待できます。 |
ライブコマース:リアルタイム配信による購買体験 |
動画配信を通じて商品を紹介・販売するライブコマースは、インタラクティブな購買体験を提供し、消費者の購買意欲を高めます。 |
サステナビリティ:環境配慮への意識の高まり |
環境問題への関心の高まりから、環境に配慮した製品やサービスへの需要が高まっています。EC事業者も、環境負荷を低減する取り組みが求められています。 |
パーソナライゼーション:顧客体験の最適化 |
AI技術などを活用し、顧客一人ひとりに合わせた商品提案やサービスを提供することで、顧客満足度とコンバージョン率の向上が期待できます。 |
BNPL (Buy Now Pay Later):後払い決済の広がり |
後払い決済サービスの普及は、消費者の購買意欲を高め、特に高額商品の購入を促進する効果があります。 |
これらのトレンドは、EC市場において競争力を維持し、成長を続ける上で重要な要素となります。
(1) モバイルコマースの普及とアプリの重要性
世界中でスマートフォンが普及し、EC市場においてもモバイルコマースの重要性が増しています。参考資料によると、世界で63億7800万人がスマートフォンを所有しており、特にミレニアル世代やZ世代は常にスマートフォンを利用しています。そのため、ECサイトへのアクセスもモバイル端末からの割合が増え、モバイルコマースへの対応は企業にとって必須となっています。
モバイルコマースの普及に伴い、企業はモバイルアプリの開発にも力を入れています。モバイルアプリは、プッシュ通知による情報配信や、アプリ限定のクーポン配布など、顧客エンゲージメントを高めるための施策を容易に実施できます。
メリット |
説明 |
---|---|
プッシュ通知 |
新商品情報やセール情報などをリアルタイムで顧客に届けられる |
アプリ限定クーポン |
アプリ利用者限定のクーポンを配布することでアプリの利用促進を図れる |
顧客エンゲージメント |
アプリを通じて顧客との接点を増やし、ロイヤルティを高められる |
また、モバイルアプリは、顧客の購買履歴や行動データを取得できるため、パーソナライズされた商品提案やマーケティング施策の実施にも役立ちます。
モバイルコマースへの対応として、レスポンシブデザインのウェブサイト構築や、モバイルアプリの開発など、様々な方法があります。企業は自社のビジネスモデルやターゲット顧客に合わせて最適な方法を選択し、モバイルコマース市場での競争力を高める必要があります。
参考資料:https://www.manegy.com/news/detail/9761/
(2) ソーシャルコマース:SNSを活用した販売戦略
近年の消費者は、SNSを通して商品情報を入手し、購買の意思決定を行う傾向が強まっています。企業にとって、SNSを効果的に活用した販売戦略は不可欠です。ここでは、主要なSNSプラットフォームごとの特性を踏まえた販売戦略を紹介します。
プラットフォーム |
戦略 |
説明 |
---|---|---|
|
ショップ機能の活用 |
Facebookページにショップタブを作成することで、ユーザーはFacebook上で商品を直接購入できます。また、Facebookショップを作成すれば、FacebookとInstagramの両方で商品を掲載・販売することが可能です。 |
|
ショッピング機能の活用 |
投稿に商品タグを付けることで、ユーザーは商品情報をスムーズに得られます。また、バイオセクションにショッパブルリンクを設置することで、購買ページへの導線を強化できます。 |
|
ショップタブ・購入可能ピン |
Pinterestのショップタブは、在庫のある商品をユーザーが検索・確認できる機能です。また、購入可能ピンを設定することで、Pinterest上での直接購入を可能にします。 |
|
Buy Nowボタン |
ツイートから直接商品を販売できるBuy Nowボタンは、購買へのハードルを下げる効果的なツールです。 |
|
Facebook Shopsとの連携 |
WhatsApp上でFacebook Shopsの商品をチェックし、チャットで購入できる機能は、顧客とのコミュニケーションを強化する上で有効です。 |
その他、各プラットフォームで利用できる広告フォーマットを活用することも重要です。例えば、Facebookではダイナミック広告やコレクション広告、Instagramでは写真広告やストーリー広告などを効果的に使用することで、より多くの顧客にリーチできます。
SNSは、顧客とのエンゲージメントを高め、購買意欲を高める上で重要な役割を果たします。それぞれのプラットフォームの特性を理解し、適切な戦略を立てることで、大きな成果を期待できます。
参考URL:https://www.j-grab.co.jp/trend/3_proven_sns_strategies/
(3) ライブコマース:リアルタイム配信による購買体験
ライブコマースとは、ライブ動画配信を通してリアルタイムで商品を販売する手法です。実店舗とECサイト双方の利点を併せ持つ点が特徴です。配信者は視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら商品を説明・販売するため、視聴者はまるで実店舗で買い物をしているかのような体験を得られます。
項目 |
説明 |
---|---|
特徴 |
ライブ配信中に視聴者と双方向のコミュニケーションが可能 |
メリット |
視聴者の疑問や不安を即座に解消できる |
メリット |
購買意欲の向上、購入率の増加 |
メリット |
スムーズな購入ステップ |
メリット |
ファンやリピーター獲得 |
新型コロナウイルスの影響で非接触型の販売手法への需要が高まる中、ライブコマースは注目を集めています。特に中国では、KOL (Key Opinion Leader) や著名人を起用した大規模なライブコマースが盛んに行われ、大きな売上規模を誇ります。中国ではアパレルだけでなく、飲食、旅行、自動車、不動産など多様な分野で活用が広がっています。
また、台湾では比較的小規模なビジネスの販促ツールとして活用され、ECサイトへの誘導を促進する役割を担っています。タイでは、個人や中小企業で人気が高く、大手企業も参入し始めています。
(4) サステナビリティ:環境配慮への意識の高まり
EC市場において、環境配慮への意識の高まりは世界的な潮流となっています。消費者は環境に配慮した商品や企業の取り組みを重視するようになり、企業も持続可能なビジネスモデルへの転換を迫られています。
アメリカでは、サステナブルECとして、環境に配慮した商品提供だけでなく、グリーンロジスティクス、サステナブルな梱包、エシカルなサプライチェーン管理など、多岐にわたる取り組みが行われています。
例えば梱包材にはリサイクル可能な素材を使用したり、過剰包装を減らすことで環境負荷を低減しています。また、輸送においてもCO2排出量削減のため、配送ルートの最適化や、電気自動車の導入が進んでいます。
取り組み |
具体例 |
---|---|
商品提供 |
再生可能資源、リサイクル素材を使用した商品の販売 |
グリーンロジスティクス |
配送ルート最適化、電気自動車導入 |
梱包 |
リサイクル可能な梱包材、過剰包装削減 |
サプライチェーン |
透明性のある倫理的な調達 |
消費者の意識変化を捉え、環境問題への取り組みを積極的に行う企業は、ブランドイメージ向上や顧客ロイヤリティの向上に繋がり、中長期的な成長にプラスの影響を与えると考えられます。
(5) パーソナライゼーション:顧客体験の最適化
パーソナライゼーションとは、顧客一人ひとりの興味関心に基づいたコミュニケーションを行うことです。顧客の年齢や性別といった属性情報だけでなく、Webサイトの閲覧履歴や購買履歴といった行動データなどを活用することで、顧客それぞれに最適な商品やサービス、情報を提供し、顧客体験を最適化します。
従来型パーソナライゼーション |
大規模パーソナライゼーション |
---|---|
チャネルごとに個別設定 |
統合管理システムによる一貫性 |
バッチ処理による集計作業 |
リアルタイムデータ活用 |
コンテンツ制作・提供に時間 |
スピーディなコンテンツ制作・提供 |
プライバシー配慮不足 |
適切なプライバシー保護 |
従来型のパーソナライゼーションは、拡張性やスピード感に課題がありました。しかし、テクノロジーの進化により、大規模なパーソナライゼーションが可能になりました。大規模なパーソナライゼーションでは、統合管理されたシステムにより、オンライン・オフラインの各チャネルを横断した顧客体験を、リアルタイムで提供できます。
パーソナライゼーションの効果測定も重要です。顧客の行動データなどを分析し、改善を繰り返すことで、更なる顧客体験の向上に繋げることができます。
(6) BNPL (Buy Now Pay Later):後払い決済の広がり
近年、特に若年層を中心に利用者を増やしているのがBNPL(Buy Now Pay Later)です。これは、商品購入時に代金を後払いできる決済方法で、分割払いが可能な点が特徴です。クレジットカードを持たない、あるいは分割払いの手数料を避けたい消費者に支持されています。
BNPL |
従来の後払い決済 |
---|---|
分割手数料無料 |
支払いは一括のみ |
加盟店が決済手数料を負担 |
消費者が手数料を負担 |
BNPLは、主に以下のような仕組みで成り立っています。
-
消費者がECサイトでBNPLを選択して購入
-
BNPL事業者が加盟店に代金を立て替え払い
-
加盟店は商品を発送
-
消費者はBNPL事業者に対して分割で支払う
2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり消費の増加に伴い、世界的にBNPL市場は急成長を遂げています。特に米国では、2020年上半期のBNPLの流通取引総額が前年同期比で197%増加しました。
BNPL市場の拡大は、EC事業者にとって新たな顧客層の獲得、ひいては売上増加のチャンスとなり得ます。一方で、手数料負担や導入コスト、そして消費者側のBNPLに対する理解不足といった課題も存在するため、導入を検討する際には慎重な判断が必要です。
海外EC市場への参出戦略
海外EC市場への参出を成功させるには、綿密な戦略が不可欠です。まずは、自社商品に適したターゲット市場を選定し、市場規模や競合、消費者ニーズ、法規制などについて徹底的な調査を行いましょう。
次に、言語や文化、商習慣の違いを理解し、ウェブサイトや商品情報、カスタマーサポートなどを現地語に対応させるローカライズは必須です。
また、海外展開においては、信頼できる現地パートナーの存在が大きな力となります。物流や決済、マーケティングなど、専門的な知識やネットワークを持つ現地企業との連携は、参入障壁を低くし、スムーズな事業展開を可能にします。
さらに、効果的なマーケティング戦略も重要です。各国の主要なECプラットフォームやSNSの特徴を理解し、適切な広告やプロモーションを実施することで、ターゲット顧客へのリーチを最大化できます。
最後に、越境ECにおける物流と決済システムの構築も欠かせません。海外発送に対応した物流網を整備し、現地で利用される主要な決済方法を導入することで、顧客の利便性を高め、購買意欲を高めることができます。
戦略項目 |
具体的な内容 |
---|---|
ターゲット市場選定 |
市場規模、競合、消費者ニーズ、法規制などを調査 |
現地パートナー連携 |
物流、決済、マーケティングなどで現地企業と連携 |
ローカライズ戦略 |
ウェブサイト、商品情報、カスタマーサポートを現地語化 |
マーケティング戦略 |
主要ECプラットフォーム、SNSで適切な広告・プロモーションを実施 |
物流・決済システム構築 |
海外発送対応の物流網整備、現地主要決済方法の導入 |
これらの戦略を総合的に展開することで、海外EC市場での成功の可能性を高めることができます。
【参考資料URL】
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2024/0901/cc7d192f8b17e6b8.html
(1) ターゲット市場の選定と市場調査の重要性
海外EC市場へ参入する際に、まず重要なのがターゲット市場の選定です。闇雲に参入するのではなく、自社商品やサービスの特性、市場規模、競合状況、法規制などを考慮し、成功可能性の高い市場を選び出す必要があります。
市場調査は、このターゲット市場選定において非常に重要な役割を担います。市場調査を実施することで、様々なデータや情報を収集・分析し、市場の現状や将来性、消費者ニーズ、競合の強み・弱みなどを客観的に把握することが可能になります。
市場調査で得られた情報は、下記のように活用できます。
目的 |
内容 |
---|---|
現地市場の把握 |
市場規模や成長性、競合状況などを把握し、参入の可否判断や事業計画立案に役立ちます。 |
消費者ニーズの把握 |
現地消費者のニーズや嗜好、購買行動などを理解し、製品開発やマーケティング戦略に反映させます。 |
競合の分析 |
競合企業の製品・サービス、価格戦略、販売チャネルなどを分析し、差別化戦略や競争優位性を構築します。 |
法規制の調査 |
各国・地域の法規制を事前に調査し、法令違反のリスクを回避します。 |
パートナー企業の調査 |
現地の有力なパートナー企業を発掘し、協力関係を構築します。 |
このように、市場調査を行うことで、海外EC市場への参入リスクを軽減し、成功の可能性を高めることができます。
(2) 現地パートナーとの連携
海外EC市場へ参入する際に、現地パートナーと連携することは成功への重要な鍵となります。適切なパートナーシップは、市場参入をスムーズにし、リスクを軽減し、ビジネスの成長を加速させる可能性を秘めています。
現地パートナーには、様々な種類があります。
パートナーの種類 |
説明 |
メリット |
デメリット |
---|---|---|---|
販売代理店 |
製品を販売 |
販売網の構築 |
マージン発生 |
現地法人 |
現地で事業展開 |
コントロール強化 |
投資コスト大 |
合弁会社 |
共同出資 |
リスク分散 |
意思決定の複雑化 |
パートナー選定にあたっては、自社のニーズや戦略に合致するパートナーを見つけることが重要です。
パートナーシップ構築にあたっては、以下の点に注意しましょう。
-
相手の事業内容、実績、評判を調査
-
契約内容を明確化
-
定期的なコミュニケーション
適切なパートナーと連携することで、海外市場での成功の可能性を高めることができます。
(3) ローカライズ戦略:言語、文化、商習慣への対応
海外ECで成功を収めるには、ローカライズ戦略は欠かせません。これは、単にウェブサイトを翻訳するだけでなく、現地の文化や商習慣に合わせた最適化を行うことを意味します。ローカライズの重要性を理解し、適切な戦略を立てることで、海外顧客の獲得、顧客満足度の向上、ひいては売上増加へと繋がります。
ローカライズ戦略では、以下の3つの要素が重要となります。
要素 |
説明 |
具体的な対応 |
---|---|---|
言語 |
現地の言語で情報提供を行う必要がある。 |
ウェブサイト、商品情報、カスタマーサポートなどを翻訳する。 |
文化 |
文化的な背景を理解し、適切な表現やデザインを用いる。 |
色使い、画像、表現方法などを文化に合わせる。 |
商習慣 |
現地の商習慣に合わせた販売方法やカスタマーサービスを提供する。 |
決済方法、配送方法、返品・交換ルールなどを最適化する。 |
例えば、マクドナルドは各国でメニューをローカライズし、インドでは宗教に配慮したメニューを提供しています。また、スズキはインドの道路状況に合わせて車の最低地上高を高く設計しています。カルピスは、海外での名称を「CALPICO」に変更することで、ブランドイメージの悪化を防ぐことに成功しました。このように、言語、文化、商習慣を深く理解し、適切なローカライズを行うことで、ターゲットとする市場において成功を収めることができるのです。
(4) マーケティング戦略:効果的なプロモーション手法
海外EC市場で成功を収めるには、適切なマーケティング戦略が不可欠です。効果的なプロモーション手法を理解し、ターゲット市場に合わせた戦略を展開しましょう。
主なプロモーション手法として、SEO、リスティング広告、ソーシャルメディアマーケティングが挙げられます。
手法 |
説明 |
難易度 |
効果 |
費用 |
---|---|---|---|---|
SEO |
検索エンジン最適化。検索結果の上位表示を目指す。 |
高 |
高 |
低~中 |
リスティング広告 |
キーワード連動型広告。費用対効果が高い。 |
中 |
中~高 |
中~高 |
ソーシャルメディアマーケティング |
SNS等を活用した販売戦略。口コミ効果も期待できる。 |
中 |
中~高 |
低~中 |
SEOは、検索エンジンで上位表示されるようにウェブサイトを最適化することで、長期的な集客効果が期待できます。リスティング広告は、費用はかかりますが、即効性があり、ターゲットを絞った広告配信が可能です。ソーシャルメディアマーケティングは、SNSの特性を活かした情報発信で、口コミ効果による拡散も期待できます。
特にアジア圏では、まだ広告競争が激化していないため、リスティング広告やソーシャルメディアマーケティングを比較的安価で開始できる可能性があります。
どの手法も、ターゲットとする国や地域によって、利用される検索エンジンやSNSが異なるため、事前のリサーチが重要です。それぞれの特性を理解し、適切な手法を選択・組み合わせることで、効果的なマーケティングを実現しましょう。
(5) 物流・決済システムの構築
越境ECを成功させるには、スムーズな物流と多様な決済手段の確保が不可欠です。顧客にとって、商品がスムーズに届き、かつ快適に支払いができることは、購買体験の満足度に直結します。そのため、適切な物流・決済システムの構築は、海外販売戦略において重要な要素となります。
物流に関しては、国際配送サービスの選定が重要です。配送スピード、コスト、追跡サービスの有無などを考慮し、自社の商品特性やターゲット市場に最適なサービスを選択しましょう。例えば、少量多品種の商品を扱う場合は、柔軟性のある配送サービスが適しています。また、高額商品を扱う場合は、安全で信頼性の高い配送サービスを選択する必要があります。
決済システムについては、多様な決済方法に対応することが重要です。クレジットカード、デビットカード、PayPal、Alipay、WeChat Payなど、主要な国際決済手段に加え、ターゲット市場で普及しているローカルな決済方法も導入することで、顧客の利便性を高め、購買意欲を高めることができます。
項目 |
考慮すべき点 |
---|---|
物流 |
配送スピード、コスト、追跡サービス、安全性、柔軟性 |
決済 |
主要国際決済手段への対応、ローカル決済方法の導入、セキュリティ対策 |
これらの要素を最適化することで、顧客満足度を高め、リピーター獲得、ひいては売上向上に繋げることが可能になります。
まとめ:海外EC市場の未来と展望
世界経済の減速懸念がある中でも、EC市場は堅調に成長を続けていくと予測されています。2023年の世界のBtoC EC市場規模は、前年比109.1%の6兆3,433億ドル(約1,002兆円)に達しました。コロナ禍により一時的に急成長した市場は落ち着きつつありますが、パンデミック前までの成長軌道に戻りつつあります。今後は年平均8.4%で拡大を続け、2033年には14兆2,338億ドル(約2,248兆円)に達する見込みです。
地域 |
市場規模 |
成長率 |
---|---|---|
アジア太平洋 |
最大 |
減速傾向 |
北米 |
– |
グローバル平均以上 |
アフリカ |
– |
グローバル平均以上 |
特にアジア太平洋地域は、中国経済の減速懸念があるものの、依然として市場規模と利用者数ともに世界最大です。インド、ベトナム、マレーシアなどの国々でEC市場が大きく伸びています。北米とアフリカはグローバル平均を上回る成長率で拡大を続けており、今後のEC市場を牽引していく存在として注目されています。
世界的な物価上昇に伴い消費者の節約志向が高まっていることから、高額商品の買い控えや中古品売買を行う傾向が強まっています。このような状況を背景に、中国越境EC事業者が低価格を武器に海外展開を加速させています。
さらに、ソーシャルコマースやライブコマースといった新しい販売形態も台頭しています。リテールメディアやMR(複合現実)を活用した没入型ショッピングなど、最先端テクノロジーの活用も今後のEC業界に大きな影響を与えると考えられます。生成AIを活用した顧客一人ひとりに最適化されたショッピング体験の提供も、今後ますます進化していくでしょう。
このように、EC市場は今後も成長を続け、新しいテクノロジーや販売形態を取り入れながら進化していくと予想されます。